Chapter
泥中
もがきながら抜けたら
いつも履いてた靴を失くしてしまい
僕らはどこに行けばいいんだろうと
君が尋ねてきた夜でした
ぽっかり空いた心に忍び込み
体内を這いずり回る黒い虫
鬱陶しくてしかたないので
業火に飛び込んでしまいました
いつも見ていた一等星が
真っ赤に燃え上がり点滅していたから
まるでブレーキランプの様だねと
君がくすりと笑いました
そんな夜でした
新しげなホワイトボードがありました
自由に書いてと教えられたので
「さよなら」とだけ書き殴った後
自らの手で命を絶ちました
万雷の拍手と歓声が
行き場を失くした君と
何もかもを失くした僕に
最後の祝福をくれました
おもむろに古びたハンカチを取り出し
ぐしゃぐしゃの顔を覆いました
暗中
もがきながら抜けたら
いつも連れてた███████を失くしてしまい
どこにいてもまた逢えるだろうと
そう信じて歩き出しました
空気が澄んだ朝でした